★ 視覚障害者のスポーツ

視覚障害者が行うスポーツについての説明です。

視覚障害者のスポーツとは?

 視覚障害者のスポーツ(ブラインドスポーツ)は、視覚障害者同士、または視覚障害者と晴眼者とが共にプレーできるように作られた障害者スポーツです。本格的な競技からレクリエーション、運動不足解消や健康増進など、その目的は一般のスポーツと同じです。障害者スポーツ競技会の最高峰であるパラリンピックでは、陸上、競泳、柔道、ゴールボール、サッカー、セーリング、スキーなどの競技に視覚障害のあるアスリートが多数出場しています。どのスポーツでも基本的に、視覚障害者は音を手がかりにプレーするため、試合中は静粛にしていることがマナーとされています。

1. ランニング・マラソン

 伴走者のサポートがあることで、全盲や強度の弱視のランナーも自由にランニングを楽しむことができます。日頃から練習に取り組み、市民マラソンの大会に参加しているランナーもたくさんいます。パラリンピックの陸上競技においても、中長距離やマラソンの種目で、ブラインドランナーが伴走者と共に活躍しています。
 ブラインドランナーと伴走者は、伴走ロープを持ってお互いの片手同士を結び併走します。レース中、伴走者はブラインドランナーより前に出てはいけないというのが規則です。伴走者は歩幅、腕の振り、スピードなどをブラインドランナーに合わせます。また、コースの状況(アップ・ダウン・フラット・カーブ・コーナー)、路面の状況、見える風景、時間などの情報をブラインドランナーに伝えます。特にブラインドランナーが練習や競技会などで最大限力を発揮するためには、伴走者の走力がブラインドランナーの走力を十分上回っていることが必須です。
 各地には、ブラインドランナーと伴走者で構成されたランニングチームが存在し、定期的に練習会を行っています。

2. 自転車

視覚障害者がサイクリングを楽しんだり、自転車競技を行うためには、基本的にタンデム自転車(2人乗り用)を使用します。晴眼者がパイロットとして前席に乗り、視覚障害者のサイクリストはストーカーとして後席に乗ります。障害者スポーツとしてのパラサイクリングでは、視覚障害クラスの競技でロード、トラックともタンデム自転車を使用したレースが実施されています。

3. 競泳

 視覚障害者にとって競泳は、晴眼者とまったく同じ形、かつほぼ自力でできる種目だといえます。水の浮力が体の支えとなり、またコースロープに沿って泳ぐことで真っ直ぐに進めるからです。コースの端の壁や他の泳者との接触にさえ気をつければ、自力で泳ぐことが可能です。身体障害者水泳の試合でも、国際水泳連盟及び日本水泳連盟が定める競泳競技規則に則って競技が行われます。
 障害のない方とほぼ同等にできる競泳ですが、ブラインドスイマーが泳ぐに当たって特徴的なのが、タッピング棒を使用しての合図です。タッピング棒とは、釣竿など棒状のものの先にウレタン製のボール状のものをつけた用具です。これで泳いでくるブラインドスイマーの頭部を叩き、壁が近づいていることを合図するのです。ブラインドスイマーはその合図を頼りに、ターンの動作に入ったり素早く壁にタッチすることができます。タッピングを担当するスタッフをタッパーといいます。このタッピングという作業はシンプルに見えて実際は難しく、選手の安全、さらには選手にとっての0.01秒を左右する、大変重要な役割を担っています。
 その他特徴として、全盲のクラスの選手は競技において公平を規すため、ブラックゴーグルの装着が義務付けられています。

4. グランドソフトボール

 日本でソフトボールをもとに開発された球技です。かつては盲人野球と呼ばれていました。野球やソフトボールとは異なる点がいくつかあります。
 直径20cmほどのハンドボールを用いてプレーします。1チームは十人のプレーヤーで構成されます。野球でショートストップに当たるポジションをレフトショートストップと呼び、そことは別にライトショートストップというポジションが加わるため、計10ポジションとなるのです。ライトショートストップの守備位置は決まっておらず、チームによってさまざまです。プレーヤー10人のうち、ピッチャーを含めて4人は全盲プレーヤーであることが決まりで、アイシェードを着けてプレーします。他の6人は弱視または晴眼のプレーヤーです。
 ピッチャーが投球する際には、キャッチャーが手を叩いてリードします。投球はアンダースロー、またはサイドスローで地面の上を転がします。球種はストレートやスローボールに限らず、スライダー・カーブ・シュートなどの投げ分けが可能です。バッターは通常の金属・木製バットを使用し、転がってくるボールを打ち返します。全盲のランナーが塁を回る際には、各塁にコーチャーが付き声で誘導します。走者と野手とが衝突しないよう、本塁・一塁・二塁・三塁には、走塁ベースと守備ベースとが別々に設けられています。守備で弱視・晴眼のプレーヤーがゴロを捕球した際には、野球と同様各塁へ送球しなければいけませんが、全盲プレーヤーがゴロやファールを捕球した場合はその時点で1アウトとなります。
 毎年8月には、全国盲学校野球大会が開催されています。

5. フロアバレーボール

 かつては盲人バレーと呼ばれていました。ボールはバレーボールと同じもの、ネットはフロアバレーボール専用のものを使用します。ネットの上でボールを打ち合うバレーボールに対し、フロアバレーボールはネットの下でボールをゴロで転がして打ち合います。1チームは6人のプレーヤーで構成されます。前衛3人は全盲プレーヤーで、アイマスクを着けてプレーします。前衛は主にネット際でプレーしますが、後衛の位置まで下がってスパイクを打つことも可能です。前衛は後衛と違い、平手でボールを固定することが許されています。後衛3人は弱視または晴眼のプレーヤーです。相手チームからのスパイクをブロックし、トスし、3回以内に相手チームへスパイクを打ち返すという点はバレーボールと同じです。

6. サウンドテーブルテニス

 かつては盲人卓球と呼ばれていました。ピンポン玉は、内部にボールベアリングや仁丹などの小さな玉を入れ、転がるときに音が出るようになっています。ラケットはラバーの付いていないものを用います。ネットの上でラリーを打ち合う卓球に対し、サウンドテーブルテニスはネットの下でボールを転がして打ち合います。卓球台の選手側半分にはコの字型に枠がついています。ボールが枠に跳ね返って台の上にとどまると打った側の得点になりますが、枠を飛び越したり、枠のないところから台の下に落ちると守り側の得点になります。卓球と同じで、1セットは11点マッチです。

7. ブラインドテニス

 日本発祥のスポーツで、考案者は武井実良(本名:視良)(たけいみよし)氏です。かつては視覚ハンディキャップテニスと呼ばれていました。ボールは音の出るスポンジボールを使用します。視覚障害者が行う他の多くの球技とは異なり、地面や床を転がすのではなく、ネットを超えて宙を飛んでくるボールを打ち返すのが特徴です。弱視プレーヤーは2バウンド、全盲プレーヤーは3バウンド以内で打ち合います。

8. ブラインドサッカー(視覚障害者5人制サッカー)

 ヨーロッパ、スペイン発祥のスポーツです。ボールはプレーヤーが位置を判断できるよう、鈴を入れて作られています。サイドラインにはボードが立っており、ボールがタッチを割ることはほとんどありません。1チームはゴールキーパーを含め5人のプレーヤーで構成されます。チームにはプレーヤーの他に、フィールドの外、相手チームのゴール裏に晴眼のコーラー(ガイド)が付き、味方プレーヤーにシュートのタイミングや方向、距離などを伝えます。全盲プレーヤーはアイマスクを着けてプレーします。全盲プレーヤーのみの試合では、晴眼のゴールキーパーを置くことができます。ディフェンスの際、他のプレーヤーとの接触を防ぐため、ボールを取りに行く時に、「ボイ!(行くぞ!の意)」と声を掛けます。試合時間は前後半各25分の、計50分間で行われ、その間に10分間のハーフタイムがあります。

9. ゴールボール

 ゴールボールは、鈴の入ったボールを転がし、相手ゴールに入れることで得点を競う球技です。第二次世界大戦の傷痍軍人のリハビリテーションとして考案され、ヨーロッパでは盛んに行われてきた経緯があります。
 ボールは、中に鈴が入ったゴムボール(1.25kg)を使用します。プレーヤーは全盲、弱視、晴眼に関わらずアイシェードを着けます。試合中、自分でアイシェードに触れる行為は反則となります。試合は1チーム3名による対戦形式で行われます。前半12分、後半12分、ハーフタイム3分で1試合となります。延長は3分×2、ゴールデンゴール形式で行います。競技は屋内で行われ、縦18m×横9mのバレーボールと同じ広さのコートを用います。コートの両端に9m幅、高さ1.3mのゴールポストがあります。コートのラインには紐が入れてあり、触って確認できるようになっています。体を横に倒し、相手チームからくるボールを全身で止める動作をセービングといいます。相手ゴールに向かってボールを転がすにも、全身を使ったさまざまな動作から多彩なボールが繰り出されます。

 視覚障害者のスポーツはこの他にもさまざまなものがあります。

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